農法の種類
農業には様々な栽培技術や栽培方法があり、自称・公称問わず色々な農法があります。
簡単に分けると「慣行農法」「有機農法」「自然農法」この3つです。
それぞれを分ける根拠は、「農薬」と「肥料」の取り扱いの違いです。
それぞれどのような特徴があるのかご紹介します。
慣行農法
農薬 作物ごとに国が定めた基準の範囲内で農薬を使用しています。
肥料 大半の農家は、有機肥料、化学肥料どちらの肥料も使用しています。作物の生育に必要な窒素分は主に化学化合物で供給します。
現代では、最も一般的な農法で日本の9割程の農家がこの農法だと言われています。
有機農法
農薬 天然素材で認可された農薬は使用できる。(化合農薬不使用)
肥料 有機肥料を使用。(化学肥料不使用)窒素分の供給は動物性や植物性の有機物を土壌に混入して土の微生物に分解させ窒素分を作物に供給しています。
近年、基準が変わって国が定めた基準による「有機JAS認定」を取得していなければ商品に「有機」と掲示することができなくなりました。有機JASの基準には「科学的に合成された肥料及び農薬に頼らない」とあり、天然素材で認可されている農薬は使用できる事になっています。
自然農法
農薬 不使用。
肥料 不使用。マメ科の植物を植えて根粒菌の力で窒素分を土壌に固定してもらうなどの方法で作物に窒素分を供給しているようです。
農薬や肥料を使用しません。田畑を耕すこともしない不耕起栽培という方法存在します。畑を極力自然環境に近づけて栽培する農法です。最近では「無農薬」「無化学肥料」と商品に掲示する事ができなくなりました。
このように大きな3つから派生する〇〇栽培というものも存在します。農薬の使用回数・化学肥料の窒素分が従来の半分のであれば「特別栽培」といえるようにもなりました。(細かい基準は農林水産省でご確認ください)
農法の選び方
農業を始める時は様々な決断をしていきますが、私の様に農法を選ぶのに悩む人もいるかもしれないと思いこの記事を書きました。
今回はあくまで農法を迷っている方に向けて書いています。例えば地球環境を守りたいという強い信念を持っている方であれば慣行農法は除外すべきかもしれません。もし、様々理由で農法を選択できず一歩を踏み出せない方がいて、私自身の経験が農法選びの参考になればいいなと思っています。
やってみてわかる事もある
私は、首都圏で農薬・化学肥料を使用せず、貸し農園で栽培指導をしてきました。当時は、農協=悪、農薬=悪、化学肥料=悪という印象を強く持っていました。秋田県に移住してきて農業を始める際は農薬や化学肥料を使用しない栽培をしようと考えていました。
紆余曲折あり、義親の農業を継ぐことを前提に手伝い始めたので、農作物の売り先・栽培方法・資材等全てがすでに揃っていました。定番の慣行農法による栽培です。最初は抵抗を感じながらやっていました。実際にやってみると慣行農法でも微生物やミミズが元気に活動していることが分かりました。反対に農薬のリスクは消費者よりも、実際に散布する生産者の方が高いのでアレルギー体質などの人はどうしても難しい事もあると感じました。
商品価値を下げない為、収益を落とさないために農薬は重要だと思いますが、できる限り使いたくないというのは変わりません。今でも時々除草剤を撒くよう言われますが、それだけは唯一首を縦に振らないで手作業で除草しています。
目的から売るところまで逆算して選ぶ
なぜ私の親が慣行農法なのかというと答えは簡単で、出荷先が農協だからです。農協は商品を市場に出します。市場で売るためには「規格」というものがあります。大きさ(S,M,Lなど)、形(曲がっていない)、傷がないなど農作物毎に規格があり規格外は引き取ってもらえません。その規格に見合うものを作ろうとすると慣行農法が一番効率的になるからです。
今回は、「農法の選び方」というテーマなので農作物の売り方は別の記事で書きたいと思いますが、売り先によって求められる商品が変わるという事です。また売り先によって商品の流通量も販売価格も変わります。
農業を始める時、生産地域、生産品目が決まっていればそこと売り先をつなぐことを考えると農法が決まってくると思います。勿論農法から逆算して売り先を考える事も可能です。
ただ、現状9割が慣行農法と言われているので、効率や消費者のニーズは慣行農法に優位性があると思います。
それ以外を選ぶという事は、それだけ自分の信念がなければ切り開いていけないでしょう。逆に言えば参入者が少ないので慣行農法よりも大きな成功をする確率は高くなるはずです。大きな成功を描くのであれば慣行農法を選ばないという選択もあるでしょう。
選択肢を狭めない
絶対にという思想がない限り、得た知識や印象だけで農法を決めてしまうのは勿体ないと感じます。
私は、慣行農法で栽培している作物と、農薬・化学肥料を使用しないで栽培している作物があります。
就農してから農法を変える事は可能です。
無理に一つの農法に絞らず、他の農法を否定することなく、広い気持ちで始めてみることをお勧めします。
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