【アスパラガス栽培始める】他の野菜と比べてどうなの?

 
この記事は、新規就農する選択肢としてアスパラガス栽培を検討している方、アスパラガス栽培を始めてみたい農家さんなど、アスパラガス栽培に興味を持っている方に向けて他の作物との比較やアスパラガスの特徴を踏まえて経営的にどうなのかという事などをお伝えします。
 
これから農業経営に関する情報を紹介していきますが、この記事はアスパラガス栽培を始めて3年目で兼業農家の私が書いておりますので偏っている部分もあるかもしれません。
 
長崎県や佐賀県などの他の産地、専業でアスパラガスを栽培している農家の情報なども参考にしていただければと思います。
 

アスパラガス栽培の特徴

 
分類毎に分けようと思いましたが、難しかったので思いつくまま列挙していきます。
 

地中が主体の植物

アスパラガスはユリ科の植物です。地下茎があって貯蔵根に蓄えた栄養で萌芽(ほうが)します。
 
地下茎で広がっていく竹やスギナなどに似ています。
 
※萌芽とは芽が出る事。
 

栽培に関する一番の特徴は

他の作物では考えられない立茎(りっけい)という作業があります。
 
春に芽が出てきてずっと採り続けていると貯蔵根の栄養が無くなって死んでしまいます。
 
その為、ある一定の期間収穫した後は収穫を控えて茎を立てて光合成させます。
 
そうすると光合成と地中の養分でまた萌芽してくるので、それを収穫することができます。
 
最初の期間に収穫したものは「春芽」、立茎後に収穫したものは「夏芽」と呼ばれています。
 

収益化までに時間が必要

果樹ほど長くはないものの、定植から最初の収穫まで約1年かかります。また、収量が安定するまでそれから2年、合わせて3年ほど必要になります。
 
種を蒔いたり、苗を植えてその年に収穫できる他の野菜と違い始めた年に収入が入ってこないのは大きな特徴です。
 
春芽を収穫できるのは3年目からで、本格的に春芽を収穫できるようになるのは4,5年目になります。
 

栽培期間は10年以上

一度植えると長い間、同じ株を育てて収穫します。20年以上続けているのも珍しくありません。
 
他の野菜に比べると毎年、種や苗の購入費用も掛からず、手間暇もかかりません。
 
但し、一度植えてしまうと大幅な土壌改良は行えなくなるので事前にしっかりとアスパラガスの栽培に適した環境にする事がその後の収量や品質に影響するので注意が必要です。
 
土壌改良については他の記事で書いています。最後にご案内しますのでよろしければご覧ください。
 

収穫期間が長め

地域差はありますが、大体で言うと露地栽培では5月~9月、ハウス栽培では2月~10月くらいの間収穫します。
 
他の野菜では、ミニトマトやナスなどアスパラガスに近い収穫期間の長いものもありますし、葉物野菜などは定植のタイミングを分けて収穫期間を伸ばしたりしていると思います。
 
毎日収穫して出荷するので約半年間現金収入が安定して入ってきます。キャッシュフローとしても大きな利点になると思います。
 
米農家や他の作物の副業としてアスパラガスを栽培する農家が多い要因の一つなのかもしれません。
 
農協を通してお米を出荷した場合は、ドンと年一回お金が振り込まれるだけなのでお金の管理や運用が難しいと思われます。
 

収穫頻度が多い

基本的に毎日の収穫が必要です。気温が上がってくればあっという間に伸びるので一日2回収穫しなければ収穫適期を逃してしまいます。
 
約半年間、毎日休みなく2回の収穫をするのは慣れなければ大変かもしれません。
 

作業内容はほとんどが収穫と選別

施肥、農薬散布、細々した管理作業はありますが、年間を通して考えるとほとんどが収穫作業と選別作業になります。
 
露地栽培の場合は、ほとんど雑草の生えてこないハウス栽培に比べて除草作業が大幅に増えます。
 

大きな機械が必要ない

多少の小型機械が必要になる事もあると思いますが、一度植えてしまえば基本的に収穫するだけなのでトラクターなどの機材がなくても栽培できます。
 
露地栽培の場合は、土壌改良費用、支柱などの資材・苗・肥料代くらいで始める事ができます。
 
ただ、茎枯病の影響もあって露地栽培は寒冷地を除き大幅に減少していっているので、ビニールハウスを使った施設栽培が基本となると思います。
 
その場合、ビニールハウス建設費用が一番大きな出費になります。
 

収穫がキツイ

地面から30㎝くらい伸びた芽を収穫するので、しゃがんで収穫する事になります。
 
立ったりしゃがんだり繰り返す作業を何時間も続けるのは個人的にはとても辛い作業です。
 
私は栽培規模がそれほど大きくない兼業農家なのでまだ良いのですが、アスパラガス専業農家として毎日収穫し続ける事はできないなと思っています。
 

専業農家が少ない

理由ははっきり分かりませんが、全体的に見ると他の作物との兼業でやっている農家が多く、アスパラガス専門農家はそれほど多くないようです。
 
専業農家の多くは収穫や選別作業はアルバイトを雇って行っている所が多いように見受けられます。
 

重量単価が高め

キャベツやブロッコリーなどの野菜に比べて重量単価が高いのが特徴です。似た例としてはニンニクやオクラなどの小さめの野菜は重量単価が高めです。
 
大きな野菜に比べて重量当たりの送料負担は小さくなりますが、大量消費はされにくいという側面もあります。
 

市場価格が安定している

要因として推測されるのは、ビニールハウスを使った施設栽培が中心になってきた事で気候の影響を受けにくく供給が安定している事、収量が安定するまで数年必要なので供給が急激に増減しない事により需給バランスが崩れることなく安定して推移のだと思われます。
 

最後に

 
私自身、アスパラガス栽培に取り組むにあたってネット検索で情報を探しましたが有益な情報に出会う事ができずに苦労した経験から少しでもこれから始める方の役に立てればとの思いから記事にしました。
 
この記事以外にも多数のアスパラガス栽培に関する記事を書いています。「アスパラガス栽培」というタグからご覧いただけます。
 
アスパラガス栽培に関して私の知りうる範囲であればどんな情報でも公開できると思います。質問や疑問等ありましたら、お問い合わせやコメントをいただければ嬉しく思います。
 

理想の土づくり(定植前編)/ アスパラガス栽培

アスパラガス農家の一年間の作業ルーティン

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2 件のコメント

  • はじめまして。中村と言います。アスパラガス農業を始めようと考えています。2つ質問があります。
    1ビニールハウス(約50mと仮定)あたりに何株植えられるものでしょうか?ネットだと株間50㎝と書いてありますが、株自体も大きいし、実際どのくらいの距離感なのかイメージできなくて、、、
    また、県の農業経営指標を見た感じだとアスパラガスは10aで粗利250万純利100万と書いてありました。それですと、生活は苦しいと思います。アスパラガス専業で食べていくことは難しいのでしょうか?

    • 中村 様

      コメントありがとうございます。
      このブログの初めてのコメントなので嬉しく思います。

      ご質問についてですが、他にも同じ疑問をお持ちの方がいるかもしれないと思った事と回答には補足説明も必要だと感じたので、ご質問に対する記事を作成し回答とさせていただきたいと思います。
      少しお時間いただきますが、宜しくお願い致します。

      中田 園道

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