理想の土づくり(定植前編)/ アスパラガス栽培

苗を植える前の土づくり

 
アスパラガスは他の野菜と違って、植えてから同じ株で20年や30年栽培を続けている例もあるほど長く育てる作物です。
一度植えると途中で土壌改良するのは難しくなるので植える前に行うのが重要です。
土壌改良を行って根域を確保しましょう。
 
土壌改良は、苗を植える前にする事が高品質と多収に繋がる。
 

根域の確保するには

根域とは、作物が根を張れる状態になっている空間の事を指します。
アスパラガスは土壌適応性の広い作物ですが、農作物として考えて収量や品質を向上させる場合には土壌環境を整えることが大切です。
 
この図は、資料を基にして私が大まかにイメージを描いたものです。
根は長いところで横幅50㎝、深さ1mの範囲まで伸びていきます。
 

根域は、露地栽培で深さ70㎝以上、ハウス栽培では50㎝以上を確保すると良い。
 

現状を知る

まず「土壌分析」をしてもらって現状把握する事をお勧めします。土壌分析は様々な機関で行っているのでネットで検索して調べるか、近隣の農業関連団体に相談しても良いと思います。
土壌分析では、基本となる土性、窒素・リン酸・加里・微量要素などの成分、PH、EC、CEC、腐植など色々と調べてくれるはずです。
年に一度など定期的に行うのが望ましいところですが、農業としてアスパラガスを栽培するのであれば最低でも一度は行うべきかと思います。
 
栽培を始める前に土壌分析を行う。

土壌改良の方法は

 

排水性のチェック

まず、地下水がどの位置にあるのか確認しましょう。
地下水位は上下するので、雨が続いた後など地下水位が上がった状態で調べるのがベスト。
穴を掘り進めると少し水が滲み出てくるようになるのでそこが地下水位です。
 
穴掘り機(スパイラルボーラー)を使うと簡単に掘る事ができます。

【驚異の穴掘り器】 スパイラルボーラー スタンダードタイプ SB-075
 
 
少し大変ですがスコップの手掘りでも確認できます。

金象 穴明きショベル 178
 
畑でスコップ作業をする時は、常に穴明きショベルを愛用しています。土がスコップにくっつく事なく作業できてとても楽です。
 

 
 
10㎝程度の畝を立てると仮定して、地下水位が露地栽培で60㎝、ハウス栽培で40㎝以内であれば対策が必要です。
明渠や暗渠を用いて排水性を高めましょう。

 

明渠・暗渠工事(排水対策) / アスパラガス半促成栽培

 

肥料や有機物の投入と天地返し

長野県の優良農家では、定植前に深耕ロータリーやトレンチャー、バックホーなどで40~70㎝くらいまでを深耕して土壌改良剤と有機物を大量に投入しています。
 
基本的な目安として10a当たり10tの完熟堆肥、石灰資材200kg、リン酸資材100kg、肥料(窒素成分量で)10~20kg。
 
ただ、先に紹介した土壌分析(上層部と下層部の両方ができれば望ましい。)の結果から土性や成分バランスに合わせて施用資材や量を調整する必要があります。
鉄、銅、亜鉛、マンガン等の微量要素も欠乏しているようであれば一緒に投与します。
深耕ロータリーやトレンチャー、バックホーを用いることで硬盤層が破壊される事や、上部と下部の土が混ざる事で下部の栄養不足や有機物の不足を解消する事ができます。
 

土づくり・施肥管理 / アスパラガス半促成栽培

 

土壌改良の項目と改善案

耕土の厚さ  暗渠排水、明渠排水、深耕、有機物
透水性    排水対策、籾殻などの粗大有機物・堆肥
孔隙率    籾殻・オガ屑などの有機物、堆肥、籾殻くん炭、木炭、バーミキュライト
土壌PH   苦土石灰などの石灰資材
CEC    ゼオライト、ベントナイト
有効態リン酸 ヨウリン、苦土重焼鱗、BM苦土重焼鱗
土壌養分   豚糞堆肥、鶏糞堆肥、有機質肥料、化学肥料
 

まとめ

 
畑ごとに土質や土性、過去の使用状況や排水性など多くの面で条件が異なります。
まずは、土壌分析を依頼して現状を把握して、その結果に合わせて必要な土壌改良を行っていきましょう。
 
特に、定植後に行うのは困難になる「暗渠排水工事」や「大規模な有機物の投入」は事前に行うことをお勧め致します。
 
 
 

参考文献

 
アスパラガスの便利帳 P36-P41
アスパラガスの高品質多収技術 P20、P59-64
プロにまなぶアスパラガスのつくり方 NO283-301
 

アスパラガス栽培を本格的に学べる本

 

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