【アスパラガス栽培始める】専業農家になって生活するのは難しい?

「アスパラガス栽培はテレビなどで儲かると言われていたのに調べてみたら儲からなそうだけど、本当に儲かるの?生活できるの?」
という疑問をお持ちの方もいらっしゃるようです。
 
この記事では、少しでも農業に対する新しい見方や考え方を広げていただきたいとの思いから解説していきますので宜しくお願い致します。
 
 
先日、ブログ読者の方からこのような質問をいただきました。
 

質問
 
県の農業経営指標を見た感じだとアスパラガスは10aで粗利250万純利100万と書いてありました。
 
それですと、生活は苦しいと思います。アスパラガス専業で食べていくことは難しいのでしょうか?

 

 
この質問はどのように受け取りどのような角度でお伝えしたら良いのかとても悩みました。
 
その反面、農家経営というテーマは非常に面白く、正解も不正解もない世界だと思います。切り口もたくさんあって色々と考えさせられました。
 

私の状況は

 
私自身もアスパラガス栽培に興味を持ち始めた3年前、アスパラガスの経営指標を見て全く同様の疑問と不安を感じました
 
少し長くなってしまうのですが、私の話しをさせていただきます。
 
農業をやりたいという思いから妻の地元である秋田に移住してきました。
 
数年は就職して様子を見ながら生活して慣れてきた頃に就農しようというのが当初の予定でした。
 
就職先を探すと、私の過去の経験と技術を活かせる職場を見つけることができませんでした。
 
また、想像していた以上に地域の賃金が安く、こうなったら今から就農してしまおうと動き始めました。
 
そして、県や市などの行政機関、農協などの関連団体と情報交換や就農計画を相談していきました。
 
そこで提示される情報や内容では起業するには不透明過ぎて計画を立てられず就農を断念しました。
 
そして義親が経営する農業を手伝いながら経験と情報を集めて今後の方針を模索する事にしました。
 
そして2年が経ちました。農業経営に関して今どのように感じ、考えているのかお伝えしたいと思います。
 

農業経営指標を解析する

 
10aで粗利250万円、純利100万円というこの数字を解析していきましょう。
 

この数字は妥当なの?

はい、妥当な数字だと思います。
 
詳しくいえば、温暖な気候の地域でビニールハウスを使って栽培した場合の試算だと推測します。
 
そして実際の農家平均より上の数字ではないかと思います。
 
栽培環境が悪かったり、技術がなければこれより悪い数字になる事も大いにあると思います
 
北海道、東北ではこれよりも2割程度低い試算になるはずです。
 

数値の裏付けを推測

10aで粗利250万円、純利100万円という数字の根拠を分析します。
 
 
計算式
 
粗利=面積×収量×単価
250万円=1反歩(10a)×2500㎏×1,000円
 
純利=粗利×所得率
100万円=250万円×40%
 
きっとこのような計算式で出した数値だと思います。
 

生活は苦しい?

質問者がどの部分を見てそう感じたのか考えてみましたが分かりませんでした。
 
一人だけで栽培管理できるのは30aくらいだと思うのでその場合でも年収300万円。
 
指標どおりに考えると、確かに厳しい数字になります
 
このままでは、アスパラガス栽培は難しいという結論になってしまいます。
 
「こうしたらアスパラガス栽培でも生活できるのでは」という提案があるので最後までお読みいただければと思います
 

アスパラガス専業農家では暮らせない?

 
いいえ、そんなことはありません。
 
全国的に見ても新規就農者でアスパラガスを選択する人も多くいます。また、実際に専業農家として生活している人も多くいらっしゃいます。
 
アスパラガス農家で食べていくことはできます
 

アスパラガス農家で生活するのは難しい?

 
難しい?と聞かれたら「難しい」と答えざるを得ません。
 
それはトマト専業農家になるのは難しい?という質問でも同じ答えになります。
 
更に言えば、ラーメン屋で食べていくのは難しいですか?と聞かれても同じ答えになります。
 
アスパラガス専業農家が難しいというのは、作物による問題ではないと思いう事です。
 
アスパラガス栽培は農業の中でも所得率が良いとされ、選択作物として推奨されているくらいです
 

農家が大変なのは作物次第?

農業経営の難しさは、作物選びによるものではないと思います。
 
農業経営を分解するとこのような計算式と捉える事も出来ます。
 
 
農業=経営+栽培技術
 
私は農業経営が他の産業に比べて難しいと感じていません。
 
事業経営能力のある人であれば、栽培技術を学べば上手くいくと思います。
 
栽培技術のある人であれば、経営を学べば上手くいくと思います。

 
どちらもなければ上手くいかないという事なのだと思います。
 

農業経営をどう考えるか

 
2年前の私は、質問者と同じく農業経営指標を見て判断しようとしていました。
 
アスパラガスでこの数字であれば、どの作物が良いの?、どれも上手くいく気がしない」そう感じていました。
 
でもいまはどんな経営指標を見ても何も問題に感じません。
 
農家になるという事は、経営者になるという事。経営者なのですから、人が提示された数字通りに判断する事も、その指標に合わせて行動する必要もありません。
 
農業経営指標の数値が良ければ始める、悪ければやらないというのはあまりにも主体的ではないと言えます。
 
判断に必要な情報を自分で集め、事業計画を自分で立てられるようになっていかないといけないと思います。
 
就農後、行政や農協に不満を言っている人を見ることがありますが、そういった方はこういった指標や行政機関や農協などの関連機関の計画に任せて就農してしまったのではないでしょうか。
 
行政職員や農協職員は情報を提供してくれたり、提案してくれたりするかもしれませんが、経営者は自分です。事業の良し悪しで生活に影響が出るのは自分だけです。
 
経営者である農家が、責任と判断力を持って農業に臨む必要があると感じています。
 

どうやってアスパラガス栽培で生活できるようになるか

 
では、最後に専業農家としてどのような経営方法があるのかという事を提案して終わります。
 
以下の指標をベースに解説していきます。
 
 

長崎県基準技術による経営指標(10a当たり)
 
販売金額
販売量 3,000㎏x販売単価 1,043円=販売金額 3,129,000円
 
生産経費
肥料・農薬費 84,000円+減価償却費 497,000円+諸材料費他 390,000円
※減価償却費はビニールハウスの建設費用だと思います。
 
販売経費
選果出荷経費 342,000円+運賃180,000円+手数料 375,000円
生産経費+販売経費=1,868,000円
 
販売金額-経費=収入(所得)1,261,000円
所得率 40,3%
労働時間 838時間
時給 1,505円
 
自作追加指標
平均労働時間70h/月
ピーク時労働時間120h/月、4h/日
 
※東北であれば2割減と考えると良い。
 

栽培面積

1日農繁期で最大8時間労働を基準にすると面積は20aです。
 
1日農繁期で最大12時間労働を基準にすると面積は30a可能になります。
(ここら辺が基準になると思います。)
 
※基準値より収量が増えれば増加するので要注意。
 

栽培技術(収量)

収量は完全に土壌条件や技術次第で大きく変わります。
 
この指標の10aあたり3000㎏は先輩や指導員に教わりながらやれば可能な数字だと思います。
 
多く採る人で5000㎏はいきますし、最大6000㎏という例もあるようです。
※東北は2割減。
 

栽培技術(品質)

品質が良ければ市場出荷だけでなく、ネット通販やバイヤーなどに販売することができ販売単価を上げることができるかもしれません。
 
市場価格参考
グラフで見る! 大田市場のアスパラガスの市況(値段・価格と数量)
 
直販価格参考
アスパラガスの検索結果|食べチョク
【楽天市場】アスパラガスの通販
 

経営努力

アスパラガス栽培のコストは主にビニールハウスの建設費用減価償却と労働力になります。
 
業者との価格交渉や、資材選び、無駄の削減など建設費用を抑えることができれば経費を低下させることができます。大きな経費削減になります。
 
作業効率を上げていけば労働時間を減らせて大幅なコスト削減になり基準値より栽培面積を増やすことも可能になるかもしれません。
 

販売能力

マーケティング能力や営業力、交渉力があればバイヤーとの契約栽培が可能になるかもしれません。SNSやネットショップを使って直販をする事ですべての生産物を高単価で販売する事も可能です。
 

経営能力

経営に自信があれば、事業規模を大きくして雇用を活用することができます。
 
指標の時給が1500円なので、単純に考えれば時給1000円でアルバイトを雇用する事ができればすべての問題は解決できます。
 

自分に合った努力をする

 
経営に自信のある方は、コスト削減・雇用に力を入れる。
 
栽培技術に自信のある方は、収量・品質に力を入れる。
 
長時間労働に自信のある方は、面積を増やす。
 
販売力に自信のある方は、直販する。

 
 
一つでもしっかり取り組めばアスパラガス農家として問題なく生活できると思います。
 
複数を努力していけば、サラリーマンの年収を超える人も出てくるでしょう。
 

まとめ

 
結論としては、すべて自分の努力次第だと思います。
 
現状の市場価格では、きちんと経営できればアスパラガス専業農家でも十分にやっていけると言えます。
 

さらに競争は激しくなる

現在の農業界は高齢化が進み農業人口が減っているとよく耳にすると思います。
 
業界を見ていて感じていることですが、これからも農業を継続しようとしている人、新規就農した人たちは、今までの農家に比べて圧倒的に努力家で兵が揃ってきています。
 
アスパラガスもどんどん品質の良いものが出回るようになってきていますし、売り方、見せ方などの販売技術も高度になっていっています。
 
これから就農する方々はそういった状況に打ち勝っていく勇気が必要かもしれません。
 

自信を持って就農するには

繰り返しになりますが、農業経営を学ぶ事と、栽培技術を身に付ける事だと思います。
 
取り組み方としては、やってみる事やりながら学ぶ事の両方が大切だと感じます。
 
一番の近道は、アスパラ農家に就職して両方を学んでから独立する方法だと思いますが、求人をしているところは全国的にあまり無いかもしれません。
 

農業経営を学ぶ

実際にやってみる方法として副業を始めるのもお勧めです。
 
今はとても副業をしやすい環境になったと思います。
 
メルカリなどのフリマアプリ、その他にも商品を売る方法はたくさんあります。
 
何かを作って売ってみたり、何かを仕入れて売ってみるのも良いかもしれません。
 
ブログを書いたり動画を制作する事も簡単に始める事ができ、収益化する事も可能になりました。
 
自分の事業を持つことは、経営に対する意識や視点を変えるいい方法だと思います
 
農業で成功している方々に会って話を聞いてみたり、他の業種の経営者からでも多くを学べると思います。
 
実際に会ったり話を聞くのは、先方への負担も大きくなってしまいます。
 
SNSの発信だったり、本などの著作物からも吸収できることは多くあるのではないかと思います。
 
農業で成功している経営者の方々を紹介した記事もありますので参考にしてみてください。

【農業の成功事例】逆境を乗り越えて成功した農家から学ぶ

 

栽培技術を学ぶ

まずはプランターや庭でアスパラガスを1株でも2株でも栽培してみる事をお勧めします
 
育ててみると色々と気になる事や知りたい事が出てくると思います。
 
そうなってからの方が、アスパラガス栽培に関する技術を勉強するいい機会だと思います。
 
学ぶ意欲が高まっていて情報を欲してから読む方が吸収が早くなるはずです。
 
アスパラガス栽培に関するオススメの本はこちらで紹介しています。

アスパラガス栽培を本格的に学べる本

 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 
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