【体験談】茎枯病が激増・蔓延してしまった時の対処法と再発防止対策|アスパラガスビニールハウス栽培

アスパラガス栽培で一番の弊害と言われている茎枯病。

対策を始めて1年目は前年の70%減、2年目は前年の90%減、3年目は前年の70%減と毎年大きな成果を上げていき、4年目には殆ど茎枯病は発病しなくなりました

茎枯病に感染した正確な数字は、404株→145株→15株→5株というように減らしていきました。

どのような対策をしてこのような成果を上げられたのか解説していきます。

最悪のスタート

このような成果を上げられたのは理由があります。
実は、初年度から圃場に茎枯病を思いっきり蔓延させてしまったのです。

1年目、茎枯病に感染して発病した株は全体の半分を超える54%に上ります。
たぶんビニールハウス栽培でここまで蔓延させてしまった人はあまりいないのではないでしょうか。それほど最悪のスタートとなりました。

どんな失敗をして茎枯病を増やしてしまったのか、そこからどんな方法で回復できたのか参考にしていただければと思います。

茎枯病が蔓延した要因

これほどまでに病気が拡がってしまった原因として考えられるものを1つずつ紹介します。

排水対策の不備(水捌けの悪さ)

アスパラガス栽培する場所に選んだのは、前年まで水稲を育てていた田んぼでした。
ビニールハウス中央の通路に1棟に1本ずつ暗渠を入れましたが、それでも雨が降ると圃場に水が溜まっていました。
地表の水を排水する排水口もありましたが、上手く機能していませんでした。通路を通じて圃場に水が流入していました。更に施工する過程でビニールハウスの外よりも中の方が低くなってしまいビニールハウスの中に水が溜まるようになっていました。

 

土壌改良不足

田んぼから畑に転換する際にやっていたのはロータリーで耕耘する事くらいです。後々、排水対策する時に発見したのは地下40~50㎝くらいのところにカチカチの粘土層でした。
また、堆肥や土壌改良資材を入れるなどの土壌改良を行わなかったので砂壌土と粘土だけの痩せた土のまま定植する事になっていました。

 

ビニールハウス施工タイミングの悪さ

ビニールハウスの建設が遅れたようで定植してからビニールハウスの建設が始まりました。その為、定植された苗はしばらく露地の環境で過ごしていました。
もしかするとこの時に、感染してしまっていたのかもしれません。

 

農薬散布の少なさ

この頃の管理を見ていたわけではないのではっきりは分かりませんが、その後の管理を見ても防除の回数が足りていなかったと思われます。

 

関わり始めるのが遅く、無知だったこと

私自身が、アスパラガス栽培に関わるようになったのは定植した年の8月か9月頃だったと思います。親が始めたものの稲作で忙しくてほったらかしになっていたのを見かねて手伝い始めました。
手を掛けるようになってから段々と圃場の問題に気づいていきました。今思えばこの頃にも茎枯病が発生していました。ただ、この時の私は茎枯病の存在も対策方法も知りませんでした。

茎枯病対策を始める

最初は目につく問題から徐々に改善していきました。前半に行った改善策は、様々な面で悪影響があったので実施しました。茎枯病対策が直接的な理由ではありませんでしたが、アスパラガスが健康で健全な状態になるという意味で間接的に好影響があったと考えて紹介します。

排水向上(基本的な対策)

雨が降ると長時間、水分の多い状態が続くので根が健全な状態でいられないと判断し改善する事にしました。

◆圃場からビニールハウスに水が流れ込まないようにビニールを地中にしっかり埋めて外と中を遮蔽しました。
◆ビニールハウスとビニールハウスの間に明渠を掘って排水口まで水が流れるようにしました。
◆暗渠の入っていない通路を深さ60㎝ほど掘って硬盤を破壊した上で、籾殻を20㎝くらい入れて埋め戻しました。
◆斜面から圃場に向かって流れてくる水を圃場に入る前に止めて入ってこないようにする工事をしました。

 

この作業に関する詳しい内容は別の記事で紹介しています。最後にリンクを貼っておきます。

土壌改良(基本的な対策)

土壌分析の結果は土壌の腐食があまりにも少なく、微量要素などあらゆる面でも不足している土だったので様々な資材を入れていきました。
使用した資材は、牛糞堆肥、籾殻、籾殻くん炭、石灰、ゼオライト、ミネラル資材、鶏糞、米糠、緑肥などを順次投与していきました。

結果
定植した真下の土はどうする事もできませんでしたが、通路の下の土壌は段々と良くなっていって根が通路まで拡がっていくようになりました。

農薬散布(直接的な対策)

県や農協が推奨している薬剤と頻度を守って散布するようにしました。
使用した薬剤は、コサイド3000・ダコニール1000・ロブラール水和剤・アフェットフロアブル・ラリー水和剤・ベルクート水和剤・ベフラン液剤等です。アミスターフロアブルを使っていた時期もありますが、強すぎて副作用もあるので今は使用を控えています。

結果
圃場全体に菌が蔓延する事はなくなりました。目に見える効果として感染したと思われる茎が薬剤によって発病することなく抑えられているのを何度か確認できました。

↓薬効で病気の進行が止まっている茎

 

残渣のバーナー焼却

農協の指導で推奨していたので実施してきました。
本格的に茎枯病に向き合うようになってからは、じっくりと長い時間をかけてしっかり焼却するように心掛けて回数も年1回から複数回行って徹底して翌年に残渣を残さない努力をしました。

結果
この対策単体での効果を計るすべがないので効果は分かりません。ただ、これを含めた対策で大きな効果が出ているので外すことはできません。
切り株の抜き取りをするようになってからは焼却時間も大幅に短くなり、回数も1回に戻しました。

茎枯病に関する個人的な見解と推測

追加の対策を紹介していく前に、私の茎枯病に対する推測と見解と語意について説明させていただきます。
これから紹介する内容は、専門家でもなくアスパラガスを栽培して5年足らずの経験からの仮説になります。誤っている可能性もあるので、あくまでも参考として受け取っていただければ嬉しく思います。

感染期(一次伝染)

圃場を消毒して、地表の残渣をバーナーで焼却しても発病を0に抑える事はできていません。専門機関の資料でも紹介されている通り、菌は土壌の中や前年の株の残渣で越冬していて萌芽する過程で土中を通過するアスパラガスの茎に感染していると思われます。

発症期(発病)

大抵、早くても茎が収穫する高さを超えてから病斑が確認されます。すぐに発病せず葉が茂ってから発見する事もあります。

転移期(二次伝染)

病斑が拡大していき、黒色小粒点が確認できる頃になると胞子を飛ばして他の株に転移していってしまいます。

追加の茎枯病対策

 

切り株の抜き取り

茎枯病に感染した茎の切り株はバーナー焼却をしても地表部だけしか焼く事ができず地中の部分はそのまま残って翌年の感染拡大に影響していると考えすべて抜き取る事にしました。

結果
この作業はとても手間暇がかかりますそれでも効果が高く、茎枯病を減らせた大きな要因だと思っています
感染する株が多くない時は、全ての株をやらずに感染した株とその隣の株くらいでも良いと思います。

発病茎の処分と感染株の立茎の仕方

茎の感染を確認した段階で即圃場から搬出しています。
感染した株をもう一度立茎した場合、新しい茎も再度発病する例が多発していました。そこで、立茎すると決めた茎が20㎝くらいになった時に根元から上の半分くらいと、茎から伝って地中に滲みこませるようにスプレーを使って農薬を掛けるようにしました。
適性に希釈した薬剤を手持ちスプレーに用意しておいて収穫をしながら感染株を発見した時に使用しています。
感染が強い株には立茎する茎に期間を空けて2回目も掛けたり、隣の株の立茎する茎にもかけるようにしていた事もあります。

結果
発病茎の処分の徹底と、立茎する茎への消毒により二次感染はなくなりました
現在は土中で感染したと思われる茎が圃場全体で1年に数本出る程度まで減っています。

 

使い捨て手袋の使用

感染した茎を処分する際は使い捨て手袋を使用して菌が手に付着して他の株に移してしまう可能性をなくしました。

結果
この対策が効果的なのかどうかは分かりません。ただ、特別大きな負荷が掛かるわけでもなく効果もあると考えて今でも続けています。

過剰だったと感じて1年で止めた対策

私が茎枯病対策を始めたのは新型コロナが発生する前でしたが、コロナ対策並みの感染対策をしていました。今はやっていませんが参考までに紹介します。

収穫時にハサミと手の消毒

収穫する時に使用するハサミや自分の手を十数メートル毎に消毒しながら収穫していました。

靴の消毒

圃場に入る前、圃場から出る時に消毒槽を用意して石灰水で消毒をしていました。

茎枯病を増やさない方法

こうやってたくさんの失敗を経験して感じたのは、アスパラガスを健康に育てるための事前の土づくり環境選択の重要性です。

排水性・肥沃度、日当たり、風通しなどアスパラガスが好み病原菌が好まない環境を用意する事が大切だと強く感じました。

その上で農薬散布や残渣の処理など適切な管理も必要だと思います。

どうしても感染茎を立茎したい場合

感染した茎をどうしても残したいと思った時のやり方も紹介します。
私自身、最初の頃はどのように対応していいか分からないまま感染した茎を抜き取る事を繰り返した結果、株に養分が無くなって萌芽することができなくなって枯れてしまった株が十数出てしまいました。
一時的に株を回復させるために感染茎を残したい時は、病斑にワセリン軟膏をたっぷり塗ってみてください。そうすると病斑の進行は止まり、胞子を飛ばすことはできなくなるので転移は防げます。ただ、茎は感染しているので徐々に別の個所から病斑が出てきます。新しい病斑にワセリンを塗り続けていっても、最終的には茎が弱っていき病斑も広範囲に拡がっていくと思うのであくまでも一時的な応急処置となります。

薬効で病気の進行が止まっているが念のためワセリンを塗布したもの

まとめ

この記事で紹介した対策は、ビニールハウスで栽培だったのでここまでの効果が出ました。
正直、露地栽培では蔓延する要因を消すことも、条件を整える事も考えきれず、私にはお手上げです。
という事でこの記事で紹介した失敗の原因と対策は、これからビニールハウスでアスパラガスを栽培する方に参考にしていただいたり、ビニールハウス栽培で茎枯病に困っている方の参考にしていただければ嬉しく思います。

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