立茎ってなに?立茎をしなければいけない理由|アスパラガス栽培

 
この記事では、なぜアスパラガスを立茎させる必要があるのか、立茎とは何なのか、いつ立茎したら良いのか、どのくらい立茎させたら良いのかなど立茎についての情報をまとめました。
 
アスパラガスには貯蔵根という機能があり一度植えると10年以上、20年以上同じ株で育てられ続けるという特徴があります。
 
それを可能にするのは立茎という作業によるものです。
 
立茎する本数・太さ・位置・品質などを解説していきます。
 
 

アスパラガスを立茎する理由

 

貯蔵根が枯渇して枯死してしまう事を防ぐ

アスパラガスは貯蔵根と呼ばれる根に蓄えられた栄養を使って萌芽しています。
萌芽したものを全て収穫し続けると貯蔵根の養分が失われていきます。養分が完全に枯渇してしまうと萌芽しなくなって根も枯れてしまいます。
 

アスパラガスの収穫方法(作型)

アスパラガスの収穫は苗を植えてから早くて2年目、遅いと3年目からです。
収穫方法は大きく分けると、普通栽培と長期どり栽培(立茎栽培)があります。
 
普通栽培栽培
従来のアスパラガスの収穫方法です。家庭菜園では今でもこの栽培方法が基本になっているようです。
春の萌芽が始まると収穫を始めて収量や品質の低下などの状況を見ながら貯蔵根の養分残量を見極めて限界だと感じた時に立茎を開始(収穫の打ち切り)します。
秋までそのままにしておいて茎葉が枯れて養分の転流が終わった後、茎葉を刈り取って処分します。
 
長期どり栽培(立茎栽培)
近年、農業としてのアスパラガス栽培で主流になりつつあるのはこの方法です。
春の萌芽が始まると収穫を始めて貯蔵根の養分がギリギリになる前に早めに立茎を始め、立茎する為の1株あたり数本の親茎だけ残してそれ以外の茎は収穫する方法です。
早めに立茎に入るのと、立茎中の一定期間収量が落ちるのとで前半は普通栽培よりも収量は減るものの、萌芽が始まる春から萌芽が終わる秋まで継続して収穫できるので一年間を通すと収量が多くなります。
 

アスパラガスの養分サイクル

アスパラガスは、種を蒔くと種の養分で発芽し光合成しながら茎葉や根を育て新しい茎も出し育っていきます。
養分は秋まで茎葉に蓄積されています。気温の低下と共に養分が貯蔵根に転流されて貯まり茎葉枯れます。
春になると貯蔵根の養分で萌芽し、立茎して茎葉が茂ると光合成で生産した養分で新しい茎を出すようになります。
その後は、気温の低下で養分を貯蔵根に送って枯れ冬を越すという事を繰り返しています。
 
アスパラガス栽培で収量を多く上げるにはこのサイクルをよく観察して適切なタイミングで立茎を行う事が必要になります。
 

立茎とは

説明するまでも無いかもしれませんが、萌芽してきた茎を収穫することなくそのまま伸ばすことをいいます。
長いもので3m以上の高さまで伸びていきます。
 
 

立茎するタイミング

 
これは栽培年数、前年にどれだけ貯蔵根に養分を貯められたのかなどあらゆる要因で変化するのでタイミングを計るのはとても難しい作業です。
一般的に公表されている情報や自身の経験を合わせた立茎のタイミングを以下の表にしました。
 
普通栽培

株の年生収穫年数春の収穫期間の目安
2年株収穫1年目7~10日
3年株収穫2年目15~20日
4年株収穫3年目30~40日
5年株収穫4年目
(以降)
60~90日
※普通栽培の経験はなく資料を引用したのみの情報です。
 
 
長期どり栽培
 
株の年生収穫年数春の収穫期間の目安
2年株収穫1年目5~15日
3年株収穫2年目20~40日
4年株収穫3年目30~50日
5年株収穫4年目
(以降)
40~60日
※栽培初年度の定植時期が遅かったり生育環境が悪いと翌年以降に大きく影響を与えるのでこの表と全く異なってしまうのでご注意ください。
また、株の養生状態でも大きく異なってしまうのであくまでも目安としてお使いください。
 
立茎するタイミングを期間で決めるのではなくピーク収量から何割減した時に立茎に入るといった方法もあるようです。
自分にあった方法を模索していく必要があるので個々の農家の技術の見せ所になります。
 
 

立茎する本数

 

普通栽培

春のあるタイミングで収穫を打ち切り、出てくる茎は全て立茎します。
 

長期どり栽培

立茎する本数は、立茎するタイミングと同じく畝幅や株間、1条植えなのか2条植えなのかなど条件によって大きく異なるので判断がとても難しい作業です。
本数に関する記述は資料によって差があります。
また、栽培する地域でも大きく違いがあるようです。
更に夏芽は親茎を中心に出てくるので親茎が少なければ収量が影響を受けます。多くし過ぎると採光性や通気性などの問題が発生して病害の影響を受けやすくなるので個々にバランスを見つけていくしかないと思います。
 
立茎する本数の目安

1mあたり1株あたり
10~18本3~6本
 
私が栽培している秋田では1株5~6本が推奨されています。
試験的に1年間3~4本でやってみましたが収量を落としてしまいました。今は5本前後が適切だと感じています。
九州などの温暖な気候では3~4本で良いのかなという気がしています。
 
 

 
 

立茎する太さ

 
夏芽以降の茎は立茎した親茎を中心に親茎と姿形が同じものが出てくるので販売したい規格に合わせて決めています。
アンケートや資料を見る限り立茎する親茎の太さは大体、直径8~15mmの範囲で行われているようです。
実際測定してみると、芽の長さが10㎝の時と40㎝の時の直径が一緒ではないのでどのタイミングで測定して判断するかも重要です。
また、10mm前後の太さのものは成長しても太さはそれほど変わりませんが、15mm前後のものは、成長する毎に直径も急激に拡がるので13mm以上のものを選ぶときは測定も慎重さが必要になると思います。
個人的には、品質も考えて14mm以下で全体的に少し細めにするのを好んでいます。
とはいっても、立茎させたい位置とタイミングでその太さが出てくるとは限らないので日々妥協と選択、決断と後悔を繰り返しています。
 
 

 
 

立茎する位置

 
立茎する位置はできるだけ茎と茎の距離を空けるようにします。
アスパラガスは親茎を中心に萌芽するので、親茎の位置を年々遠くに移動させることもできますし、ある程度決まった位置で萌芽させ続ける事もできます。
農協の指導では最低でも間隔を拳一つ分空けるようにといわれています。自身が選んだ立茎本数から逆算してバランスの良い位置で立茎できれば理想的です。
 
 

 
 

立茎する品質

 
穂先が綺麗でまっすぐ伸びている健康的で品質の良いものを選びます。
約半年間光合成をお願いする茎になるのと、後に出てくる夏芽の見本となるのでできるだけ良いものを選ぶようにしています。
 
 

まとめ

 
立茎は1年間の収量への影響も大きくアスパラガス農家にとって技術が試されます。
家庭菜園をやっている方でも十数株以上を育てているのであれば長期どり栽培に挑戦してみてみるのも良いのではないかと思います。
 
アスパラガス栽培で一番の弊害となる茎枯病は立茎後に大きな影響を受けます。茎枯病に関する記事も書いているのでよろしければ合わせてお読みください。
 

【体験談】茎枯病が激増・蔓延してしまった時の対処法と再発防止対策|アスパラガスビニールハウス栽培

 
参考文献:アスパラガスの作業便利帳アスパラガスの高品質多収技術レベルアップのアスパラガス栽培
 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください